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「総合センター」の指定継続の裏で [社労士]

前回のブログでは、愛育病院が「総合周産期母子医療センター」の指定返上を東京都に申し出たニュースについて書きました。そのなかで「総合周産期母子医療センター」の指定を継続するニュースの続報があると書きましたが、裏ではこんな事情があったそうです。

愛育病院、一転して総合周産期センター継続を検討へ(asahi.com)

記事は、

〈  リスクの高いお産を診る「総合周産期母子医療センター」の指定返上を東京都に申し出た愛育病院(港区)は26日、再考を求める都の意向を受け入れ、総合センターの継続を検討することを決めた。  〉

〈 同病院は、医師の勤務条件に関する労働基準監督署の是正勧告を受け、総合センターとして望ましいとされる産科医の当直2人以上の態勢を常勤医だけでは維持できないと判断し、返上を申し出た。  〉

〈 同病院によると、26日に病院を訪れた都の担当者から、周産期医療の提供体制を守るために必要だとして継続を要請された。都側は非常勤の医師だけの当直を認める姿勢を示したという。 〉

〈 一方、厚生労働省の担当者からは25日、労働基準法に関する告示で時間外勤務時間の上限と定められた年360時間について、「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」と説明されたという。 〉

〈 中林正雄院長は26日の記者会見で、「非常勤医2人の当直という日があってもいいのか。特別条項で基準を超える時間外労働をさせても法違反にならないのか。都や厚労省に文書で保証してもらいたい」と話した。 〉

〈 中林院長は、非常勤医だけで当直をすることの是非について、周産期医療の関係機関でつくる協議会に検討を求めたことも明らかにした。  〉

とあります。

医師が常勤か非常勤かは専門外ですのでふれませんが、時間外労働は社労士のストライク・ゾーンにありますので、これまでの流れを押さえつつ、感じたことを書きます。

労働基準法では労働者(お医者さんであっても勤務医は労働者です。)の労働時間は、原則として1週間に40時間、1日8時間を超えてはならないと決められています。しかし、愛育病院に限らずほとんどの会社にとっても、いくら法律がそうであってもそれじゃやっていけませんということになります。そこで、労働者と使用者が時間外労働の理由や時間などを協議して届け出れば猶予しますよというのが36協定です。

愛育病院は、この36協定がないまま時間外労働をしているということで労働基準監督署の是正勧告を受けたのですが、では新たに労使で36協定をし、それを届け出ればよいかというと、そこにも問題がありました。

時間外労働を猶予する36協定といっても無制限に認められるものではありません。厚生労働大臣は、時間外労働の限度時間(1ヶ月45時間、1年に360時間まで)を告示していて、その限度時間以内の36協定でないと労働基準監督署は受け付けません。愛育病院は、夜勤があるため時間外労働時間が限度時間に収まらず、36協定が届けられないため「総合周産期母子医療センター」の指定返上というニュースになりました。

そこでこのasahi.comの記事にある、厚生労働省の担当者からの「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」との説明が出てきます。特別条項付の36協定とは、一時的、臨時的な特別な事情により36協定の限度時間を越えて労働させる必要がある場合に、具体的な事情などを明らかにするなどして1年のうち半年まで認めてもらえるもので、これを用いれば1年360時間の限度時間を越えた36協定を届け出られます。

以上、まるで自分が当事者で見てきたかのように書いてきましたが、すべては記事を読んでの推測です。感想としては、是正報告書を労働基準監督署に届け出て受理してもらうために問題を半年先送りしただけなんだろうなということです。半年後に産科医の増員ができていなければまた同じニュースを見るようになるのではないでしょうか。

細かいところをつつけば、そもそも36協定の限度時間は法律で定めたものではないので、限度時間を越えた36協定はたとえ労働基準監督署が受け付けなくても届け出た段階で有効になるのではとかありますが、やはり腕の確かな産科医の増員なんでしょうね。産婦人科のお医者さんが無理のないシフト勤務で安心して出産に立ち会える日が来ることが何よりも一番だと思います、はい。

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