SSブログ

減給の懲戒処分 [社労士]

3ヶ月で遅刻を49回もした県職員が減給1割を1か月間の懲戒処分を不服として提訴したということに、疑問の声が相次いでいるというニュースがありました。

ニュースはこちらです。

「遅刻49回合計4時間で減給」は厳し過ぎる 群馬県職員の提訴に疑問多数 (J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

今日は記事の引用はしませんが、まとめると2010年3月8日~6月14日にかけて1~11分の遅刻を49回繰り返していた県職員に対して、県は減給1割を1か月間の懲戒処分をしたのですが、職員は遅刻した分を居残って仕事をしていたし、合計して4時間強の遅刻に対しての懲戒処分として相当でなく、違法で無効だとし、処分の取り消しと慰謝料などを県に求める訴訟を起こしたということです。

県が下した減給1割を1か月間の懲戒処分が妥当であるか、ないかについては、遅刻の理由も分かりませんしまだ裁判所の判断も出ていませんので書きませんが、今日は減給処分とはどのようなものであるかについて書きます。

労働基準法では減給処分の制限について、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないと定めています。

第九十一条  (制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

1回の額とは制裁の対象となる1つの事案となり、遅刻1件でも、会社に重大な損害を与えた事故の1件でも1回となり、減給の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならないということです。

今回の懲戒処分は減給1割ということで、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えていませんが、仮に遅刻1回について減給の額が平均賃金の1日分の半額と定められていたとしたら(1~11分の遅刻で減給が認められるかというのは別にしてです)、49回の遅刻は24.5日分の減給となり1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてしまいますので、そのような場合には減給1割の残額を翌月以降に1割ずつ控除するということが認められています。

なお、労基法第91条は制裁規定の制限の規定ですから、遅刻・早退の時間分の賃金をカットした場合に1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えたとしても、ノーワーク・ノーペイの原則により働いていない分の賃金を払う必要がないだけで、制裁として減給するわけではないので問題はありません。

逆に言うと、遅刻・早退の時間分以上の賃金をカットした場合には制裁規定の制限が適用されるということになります。

今回の減給処分ですが、確かに計4時間強の遅刻としてなら相当でないように思えなくもありませんが、計4時間強の計が3ヶ月に49回の遅刻の合計なんですからねえ、どんなに職場の規律などを乱したのかを思えば、私ならこの程度の懲戒処分ですんで良かったよ、と思うことはあっても、不服として提訴するなんてありえないでしょうね。

おっと、懲戒処分が妥当であるか、ないかについては書かないつもりだったのに余計なことを書いてしまいましたよ。

私の事務所のホームページです。こちらもご覧ください。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー・DCプランナー 安部事務所(クリックしてください)

nice!(12)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。