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「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」 [社労士]

文春新書の「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」を読みました。

筆者の今野晴貴さんは、大学在学中にNPO法人を設立して労働相談活動、調査活動をしてきた1983年生まれの若い方です。

本の前半では、月収を誇張や「正社員」という偽装で大量の募集採用をし、入社後の選別競争と戦略的なパワハラにより使える社員を選別し、残業代を支払わずに長時間労働をさせながら会社を辞めさせずに社員を使い捨てし、それらの結果職場崩壊するブラック企業のパターンを実例をあげて紹介し(ただ、会社名がばっちり出ているのと、匿名になっている会社の2種類があるのが不思議です)、後半では社会問題としてブラック企業を捉えて問題提起しています。

紹介されているブラック企業の実例はどれもひどいものばかりでした、こんなことは絶対にあってはなりません。

ただ、これらは数多く受けた相談の中でも特に悪質なものであったり、あるいは裁判になって報道されたものですから、いくらなんでもここまでメチャクチャな会社はそうそうないと思います、いや思いたいです。

それに筆者の立ち位置は労働者側にあって、相談例として紹介されたいるものは被害にあった労働者の言い分だけを伝えているだけですからねえ、まあ、そうであっていくらか割り引いて見たとしても事例のブラック企業のおこないは決して許されるものではありませんが。

しかし、昔に比べてずっと情報量が多い現在になってブラック企業が増えているというのが、どうしても不思議に思います。

こうなるとおっさんの私なんかはつい「最近の若い人は・・・」なんて思ってしまうのですが、若者の代弁者でもある筆者はそれだけがブラック企業が問題化する原因ではないと断じています。

やっぱり、「売り手市場」と「買い手市場」の違いは決定的なのでしょうか。

後半の社会問題としてのブラック企業についてですが、今の日本が良くないのはすべてブラック企業のせいだみたいな話の膨らませ方で、この問題が解決すればばら色の未来があるような書き方にまでなって、こんなことならむしろ現場の生の声だけを聞かせるだけで終わった方が本としてのまとまりが取れたのではと思いました。

あくまでも、著者は悪の権化であるブラック企業と犠牲になる可哀想な労働者という対決の構図の中での労働者の味方という立場ですからねえ、社会問題として捉えて解決策を練るためにはどちらかに一方的に肩入れしていては無理だろうと思いますよ。

この問題、悪いのはもちろんブラック企業ですが、かと言って被害者の声を聞くだけで、ブラック企業の言い分は聞かないというのでは、決して問題は解決できないでしょうね。

悪の権化が跋扈する背景には、悪の手先である弁護士や社会保険労務士のブラック士業がブラック企業と労働者の間に介在してより深刻になっていると書かれていました。

しかも、社会保険労務士は労務管理の専門家といっても保険関係の処理に限定されて、労働法に熟知しているわけでもないとまで言い切ってしまっています。

おっしゃるとおり、私はブラックではありませんがかと言って真っ白でもありませんし、労働法のなにからなにまで熟知しているわけではありませんが(しかも、保険関係の処理も苦手だったりします)こういう書き方はどうなのと思いますよね。

さすがにこれだけではまずいと思うのか、カッコ書きで多くは法律に基づいて業務をしていて、こういったブラック士業が現れて困っているのはまともな仕事をしている側だと言い訳をしていましたけどね。

攻撃対象はブラック士業だけでなく、企業別労働組合、キャリア・カウンセラーにも及んでいます。

なぜかというと、困ったときに本当に頼りになるのはこれらではなくて、個人加盟ユニオンや労働NPO法人ですよと言いたいからなんでしょうが、最近は胡散臭いNPOが本当に多いですからねえ、NPO法人だと安易に頼るほうがよっぽど危険だと思いますよ(私もカッコ書きで多くのNPOは誠実に仕事をしていて、ブラックNPOが現れて困っているのはまともな仕事をしている側だと言い訳をしておきますよ)。

ブラック企業問題が解決されれば世の中の全てが良くなるなんて私はこれっぽっちも思いませんが、だからといってこんなひどい会社があっていいわけは絶対にありませんね。

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