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セクハラ最高裁判例 判決文のまとめ [社労士]

前回のブログで、部下の女性にセクハラ発言を繰り返した男性を懲戒処分としたことが妥当だったかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷が処分を無効とした2審・大阪高裁判決を破棄し、会社側の逆転勝訴の判決を言い渡したというニュースを紹介しましたが、訴訟の経緯、判決の理由についてこの記事からだけでなく複数の記事から読んで書いたのですが、どうも自分で書いておきながら今ひとつすっきりしませんでしたので、最高裁第1小法廷の判決文をまとめて整理してみます。

この訴訟は、会社の男性従業員2人が部下となる別会社から派遣された女性、別会社の社員として請負業務に従事する女性に対してセクハラ行為をしたことを懲戒事由に、会社から出勤停止処分とこれに伴う降格処分を受けたことに対して、出勤停止処分、降格処分が懲戒権の濫用で無効であると主張した事案です。

女性は1年以上にわたってセクハラ被害を受けていましたが、報復や派遣元の会社の立場の悪化を懸念して、男性従業員に直接抗議したり、会社に訴えたりすることを控えていましたが、セクハラ被害も一因となって会社の勤務を辞めるのに当たり、残る女性や後任者のことを考えて会社に対して被害の申告をしました。

で、このセクハラ行為がまたずいぶんひどい発言なんですよね、女性が1人でいるときに自分の不貞相手に関する性的な事柄や自分の性器,性欲等について具体的な話をするなどの露骨に卑猥な話を繰り返したり、同じく女性が1人でいるときに女性の年齢、結婚をしていないことを侮辱し困惑させる発言を繰り返して、さらに派遣社員である女性の給料が少ないので副業で夜の仕事が必要じゃないのと揶揄したというものです。

両方ともまだまだひどい発言があったんですが、書いているだけでも気分が悪くなるのでこの辺にさせてください。

ちなみに会社は前者に対して30日の出勤停止処分、後者に対して10日の出勤停止処分を科しました。

1審、2審共にセクハラ行為をおこなったことを、会社が就業規則で禁止する会社の秩序又は職場規律を乱すものに当たり出勤停止などの懲戒事由に該当すると判断したんですが、一方で2審では、男性従業員2人が女性から明確な拒否の姿勢を示していなかったので許されていると誤解していたことや、懲戒を受ける前に会社のセクハラについての懲戒の具体的な方針を認識する機会がなく、セクハラ行為について会社から事前に警告や注意等を受けていなかったことなどを考慮すると、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分をおこなうことは酷で、懲戒権の濫用で無効であると判断しました。

最高裁第1小法廷は、

女性がが内心でセクハラ行為に著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗、会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられること

会社が職場におけるセクハラの防止を重要課題と位置付けてセクハラ禁止文書を作成してこれを従業員らに周知させるとともに、セクハラに関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなどのセクハラの防止のために種々の取組をおこなっていて、男性従業員が研修をを受けていただけでなく管理職として会社の方針や取組を十分に理解し、セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらずセクハラ行為を繰り返したこと

セクハラ行為が第三者のいない状況でおこなわれていて、会社が女性から被害の申告を受ける前の時点ではセクハラ行為、被害の実態を具体的に認識して警告や注意をおこない得る機会もなかったので、事前に会社から警告や注意等を受けていなかったなどとして、男性従業員に有利な事情としてしんしゃくする事情があるとはいえないこと

から、出勤停止処分とこれに伴う降格処分も人事権を濫用したものとはいえず有効なものと判断し、会社の敗訴部分を棄却し男性従業員の控訴を破棄しました。

こうして判決文を読むともっともだよなと思います、すっきりしました。

ちなみに、判決文は裁判所のホームページから裁判例情報で見ることができるんですよ、まあ、普通はわざわざ見るものではありませんかね。

前回は忘れた息抜き動画ですが、今日はどんな夢を見ていたのというワンちゃん動画です。



壁にぶつかってから我に返っていますね、寝惚け癖ひどすぎです。

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