SSブログ

変形労働時間制を認めず、残業代の支払い命令のニュース [社労士]

変形労働時間制を理由に残業代を支払わないのは不当だとして、未払いの残業代の支払いを命じる判決のニュースがありました。ニュースを読む限りではこの会社の変形労働時間制のどの部分が無効とされたのかがよく分かりませんので、このブログで取り上げるべきか迷いましたが、分かる範囲内で感想と解説をします。ニュースはこちらです。

「変形労働時間制」残業代未払いで無効判決

記事は、

〉 忙しさに応じて労働時間を調整する「変形労働時間制」を理由に残業代を支払わないのは不当だとして、スパゲティ店「洋麺屋五右衛門」の元アルバイトの男性(28)が同店を展開する「日本レストランシステム」(東京)を相手取り、未払い残業代など約20万円を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であり、藤井聖悟裁判官は、同社に時効分を除いた約12万円の支払いを命じた。

〉 判決によると、同社では1か月単位の変形労働時間制を導入し、1日8時間を超えて働いた場合でも残業代を払わなかったが、半月分の勤務表しか作っておらず、「労働基準法の要件を満たしていない」として、同社の変形労働時間制は無効とした。

〉 労働基準法では週40時間、1日8時間以内の労働時間を基本とするが、曜日や季節による繁閑が大きい場合には変形労働時間制の導入が認められ、一定期間内の平均が週40時間内であれば1日8時間を超えて働いても残業代を払う必要がない。ただ、極端な長時間労働を避けるため事前に労働時間を決めておく必要がある。

〉 男性の代理人の弁護士は「アルバイトにまで変形労働時間制を採り入れるのは、繁忙期の残業代の支払いを免れる目的以外には考えられない」と話している。

〉 同社人事部は「判決をよく検討して対応を決めたい」としている。

とあります。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の一定の期間を平均した1週間の労働時間が40時間(一部44時間)を超えなければ、1日8時間や1週間40時間(一部44時間)の法定労働時間を越えてもいいよ、という制度です。これを使うと、例えば1ヶ月以内の一定の期間のある週で1日9時間労働の日が3日あっても、別の週で7時間労働の日が3日あれば平均した1週間の労働時間は40時間となるので3時間分の割増賃金を支払わずにすむということになります。

この記事を読むと、半月分の勤務表しか作っていないので変形労働時間制は無効としか読めないのですが、半月の勤務表の中の平均した1週間の労働時間が法定労働時間を超えなければ無効にはならないと思うのですが、どうなんでしょうか。気になるので他紙の記事も読んでみました。

<残業代>変形労働時間制認めず、支払い命令…説明なく適用

〉 判決は「変形労働時間制は、就業規則では1カ月単位でシフトを決めるはずが、半月ごとのシフトしか作成していない」として変形労働時間制にあたらないと認め、時効分を除く残業代などの支払いを命じた。(一部抜粋)

「変形時間」適用認めず=飲食店に残業代支払い命令-東京地裁

〉 訴状などによると、半月単位のシフトが急に変更されたり、就業中に突然休憩に出されて勤務時間を削られたりしたという。(一部抜粋) 

とありますので、半月分の勤務表しか作っていないので変形労働時間制は無効ということではなく、就業規則と現実に相違があり、しかも運用がムチャクチャだったので無効との判決が出たようです。1つの記事だけを読んでは分からないことも、複数の記事を読めばなんとなく見えてきます。

しかし、立派な就業規則があったとしても、守られていなければ何の意味もありませんね。今回の判決も会社がもう少し配慮をしていたならば別の結果になったと思いますよ。

私の事務所のホームページです。こちらもご覧ください。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー・DCプランナー 安部事務所(クリックしてください。)

公的・民間を問わず、「保険」、「年金」 と名のつくものについては、なんでもお気軽にお問い合わせください。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。