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本当は間違いばかりの「戦国史の常識」(読書感想) [その他]

ソフトバンク新書の、本当は間違いばかりの「戦国史の常識」という本を読みました。

著者の八幡和郎さんは歴史に関する新書、文庫本をかなり書いていて、私も本屋で見かけるたびに買ってけっこう読んでいますが、この方は人の好き嫌いが激しい人なのか歴史上の人物の好き嫌いも激しく、しかも好きな人は偉いといって褒めたたえ、嫌いな人は偉くないといってこき下ろすというのが前提の極端で刺激的な歴史観で本を書いていますので、読む人によってはとうてい受け入れられない人も出てくるかもしれませんね。

私も別に八幡さんの歴史観に何から何まで共感しているわけでもなく、むしろそれは違うだろうという部分が多いのですが、別に歴史を学ぼうというわけでなく気楽に読む本としては楽しいので読んでいます。

で、この本当は間違いばかりの「戦国史の常識」ですが、戦国時代の前の室町時代から江戸時代の始まりまで、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、その他の戦国大名などについてのこれまでの常識(例、織田信長が最も恐れた天下取りのライバルは武田信玄だった)の間違いを検証しています(武田信玄はライバルと言われるほどビックな存在ではなく、信濃征服だけに人生の大半を費やしたローカルヒーローだった)。

取り上げている常識が50近くあるため、「なにを今さら、すでに別の本で読んでいるわい」という常識が多く、「初めて知りました」というものは少なかったのですが、むしろ戦国時代ではなく室町時代の常識についてが新鮮でした。

人の好き嫌いでいうと、著者は豊臣秀吉が大好きなのに対して徳川家康は嫌いなので、秀吉についてはポジティブに、家康についてはネガティブに書かれていますが、これまでの著者の本に比べればかなり抑え目に書かれていました。

著者の家康、および江戸時代嫌いでいうと、江戸時代は今の北朝鮮にそっくりの暗黒時代だったという、「本当は恐ろしい江戸時代」という本がありますが、これはこれで過激で面白い本ですよ。

まあ、それでも秀吉が将軍ではなく関白になったのは、正式な政府としての朝廷があるのに政務を丸投げした武家の幕府がある変則体制を、朝廷に一本化した明治維新の王政復古の先取りだというのは、秀吉好きの著者ならではの見方であって、私なんかは秀吉の出自がああで、代々主従関係にあったわけでもないかつての同僚を統制するためには、単独で幕府を開くよりも朝廷の権威を利用した方が政権の維持がしやすかったからではないかと思ったりしました。

いちゃもんついでにもうひとつ、足利義満が日本国王を名乗って遣明船を送ったことを非難して遣唐使を誉めるのはバランスからいっておかしいと書いてありましたが、冊封を受けていない遣唐使に対して、日本国王を名乗って朝貢した遣明使はやっぱり問題があったでしょうし、著者もそうは思っているのかもともと日本国王を名乗ったのは南朝方の懐良親王で義満はそれを引き継いだのと言い訳をしていますが、それじゃあ「僕の前に〇〇君がやっていたんだから、僕は悪くありません」という子供の言い訳と変わらず、さっぱり説得力はありませんね。

本書で検証されている間違った常識をいくつか並べます。

○室町時代は幕府が弱体だったから戦乱が相次いだ

○織田信長は最初から足利義昭を追い出すつもりだった

○本能寺の変は伝統軽視に反発した朝廷が明智光秀をけしかけた

○太閤検地や国替えは中央集権策で大名たちは嫌がった

○秀吉が淀殿を側室にしたのはお市の方への慕情の延長

○家康が江戸を日本の中心の大都市にたらしめた

○徳川秀忠が2代将軍になったことで豊臣家の天下がなくなった

○上杉謙信は大国越後を領して豊かだった

○伊達政宗があと10年早く生まれていたら天下取りのチャンスがあった

○坂本龍馬などの土佐の郷士は酷く差別された

○朝鮮出兵は日本国内の領地不足が原因

○江戸時代に鎖国をしたから植民地にならずにすんだ

はたして、これらの常識のどこが間違っているのでしょうか。

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